平成21年度

                    夏期防衛講座

 横須賀地区防衛諸団体共催による合同夏期防衛講座が、8月26日()午後、講師に前駐米大使で現在日本プロフェッショナル野球組織コミッショナーの加藤良三氏をお迎えし、記念艦「三笠」大講堂で開催された
 本講座は毎年横須賀地区防衛関係11団体が共同で開催しているが、今年は横須賀水交会が主幹事として計画、準備、運営にあたった
 当日は、政権交代が予想された衆議院選挙の4日前であり、重要な争点である日米関係及び防衛政策に関連する講演であったことから、講演への期待が高まる中で、防衛諸団体の会員、副市長・市議等一般来賓及び自衛艦隊司令官、横須賀地方総監等横須賀在所陸・海・空自衛隊の指揮官など約220名に及ぶ多数の参加者があった
 講演会は定刻の15時30分から土井幹事の司会により、共催11団体代表の紹介、小山防衛協会会長の挨拶、長崎横須賀水交会長による講師の紹介に引き続き、加藤講師による「日米関係と日本の安全保障」と題して、約1時間半の講演が行われた
 講師は、昭和40年外務省に入省、昨年5月に駐米大使で退官されるまでの四十数年間、本省、在外大使館等で勤務された。特に、米国には概ね15年半と長きにわたり赴任され、最後の駐米大使は戦後最長の6年半にわたり、日米関係の発展に大きく貢献された。講演では、講師の豊富な経験に基づく外交現場における生の声を聞くことができ、日米外交の一面を理解することができた
 講演は、はじめに、帰国してからの日本の感想として、@日本人同士の連帯感、思いやりが弱くなっており、マスコミの影響により他人を非難する人が多くなっている。A情報の扱いがぞんざいで精細さが欠けており、国益のために使わず、私益に切り売りしている。などの指摘があった。また、国際貢献に関して、同盟国などへの思いやりに欠け、結果として、ノーリスク・ハイリターンの傾向が強く、日本人の命に関する限り、国の政策・意思によって命を奪うことがあってはならないという、信仰に近い何かがある。このため、今後国際貢献の拡充、尊敬を得られる地位につくためには、リスクのない国際貢献はないことから、リスク管理に万全を尽くし、補償等のシステムを作っておくなどの思考の成熟が必要になると指摘された
 主題の日米同盟については、世界でも不思議な同盟であると述べられた。通常の同盟では相互防衛が中核で揺らぐことはないが、日米同盟では、集団的自衛権の問題など、相互防衛が不透明であり、このため、日本は相互防衛以外の国際問題・課題にアメリカに協力し、同じ方向性を出すことで配慮する構図となっている。しかし、反米的な人、マスメディア等はこの努力も対米追従とみなし、アメリカとの同盟により安全を確保しながら、同盟とは逆なことを発言している。また、左翼または一部のメディアも含めて、海外での実力行動を許さないなど、自衛隊の活動に制約を課してきた。彼らは、日本人は切れたら何をするか判らないとか、外国で軍事力を行使するほど成熟した民主主義を持っていないなどと、シンポジューム等で外に向かって発表をするなど、自分の国にとってこんな失礼な話はない。と述べた後、ほとんどの国が日本に対してもっと大きな役割を期待しており、素地は十分にあると話された
 次に米国の特徴については、朝河貫一著作「日本の禍機」を引用し、@欧州、日本などと異なり、歴史が浅く、語り継ぐべき神話の無い国であり、現実の価値で問題を解決する国であること、また、A2軸型国家であり、民主党、共和党の2つの軸がないと、安心、安全を感じない国であること、が述べられた。 最後に、中国台頭の状況にあって、日本は、「日米関係の強化か」、「日米中の正三角形外交か」、「国連中心の全方位外交か」、核を含むあらゆるタブーを排除し、安全保障を考える必要があること、さらに、個人的には「日米同盟の強化」が日本にとってもっとも資する選択であること、また、日米には民主主義を共有しており、米国にとっても日本は重要な国であると述べられた

 講演終了後、一般来賓及び自衛艦隊司令官、横須賀地方総監はじめ各級指揮官、先任伍長などの参加を得て、三笠後甲板において納涼懇親会を開催した。 会員相互また現役自衛官との懇談は弾み、時間を忘れるほどの盛会であった